現状分析批判(序)
2019年年末のGDP速報値はマイナス成長となった。世界的に成長率で見る限りこのところ、減速傾向が顕著になってきている。
そこで始ったのが、新型コロナウイルスの世界的蔓延です。この伝染病の世界経済に与える影響は計り知れないものがあることは
当然のことながら、景気リセッションの増幅器になるのか、あるいは其れ自体がリセッションとなり、
本体のリセッションを先送りさせる機能を果たすのか
現状を見る限り悩しい限りである。今さに景気の減退期にある時にこの伝染病の世界的大流行である。中国に始り
韓国、日本、イランそしてイタリアで猛威を振るう。世界中に広るのも時間の問題であろう。
こうした状況の下世界経済の動向を分析する視点は二つに大別される。一つはリーマンショック後より再び堆積した世界経済の不均衡
問題である。世界市場の集積と分割といった相反する現象が業種により資本により複雑に入り交じり、帝国主義の経済圏で色分けできる
程、事は単純ではない。ソ連圏や中国圏といった経済圏がグローバル化した経済圏に組み込れたばかりでなく、それ自体がた新たな
経済圏を構築するといったより重層的な経済圏を思い起こすとよいだろう。
ここ十年は中国経済の成長と台頭が顕著であるが、同時に東南アジア諸国の発展と世界経済に占める比重に注意を移す視点が必要である。
加えてインドやパキスタンもこれからの世界経済を語るうえで、重要となるであろう。
二つ目は新型コロナウイルスの世界経済に与えるであろう問題である。
新型コロナウイルスにより、景気は大いに減速しているからさあ、大きなリセッションが起きると単純に言えない。通常リセッションが
発生する時には急激な需要の落ち込みとそれに相反する供給の過剰が発生する。ところが今次の問題は供給と需要の減少に伴う、
多くの経済主体間、あるいは経済部門間の需要と供給の不均衡にある。それは物流の隘路により、サプライチェーンの欠損により
世界的に需要と供給のアンバランスが垣間見える。
実物経済は需要はあるのに供給不足に、供給はあるのに方や需要不足により生産活動は縮小を余儀なくされている。また、政治セクター
の要請により生産活動を行うべき人的移動が制限されるといった事態がこれまた世界各処に見受けられる。
景気循環なり景気変動は人の経済活動によりその結果として持続的な成長や意に反したリセッションに見舞われる。ところが今私達が
遭遇している新型コロナウイルスに起因する事態は人的活動による経済変動とは異なるのであるが、その結果により生じる状況は似たものと
なるであろう。経済活動による変調が起こると必ず因果関係が議論されるのであるが、原因が新型コロナウイルスに起因するのであるから
皆似たり寄ったりの議論となると想定する。世界経済の大きな事件であるから、世界史的に大事件であるから私も一応トレースはするが
資本それ自体の自壊作用として認識はしない。
新型コロナウイルスは地球規模で拡散しているようである。その経済分析は本論とは別にそれ自体独自なものとして捉えていこう。
新型コロナウイルスは国という国のすべてに、都市という都市の隅々まで、ありとあらゆるコミニュティの人と人との間に入り込む。
人と人との商品流通は資本主義的生産様式以前の、言い換えれば商品流通の社会化が未発達な領域を人々は欲する。
社会は自分たちが最低限生き延びられる、ある限られた期間だけの商品流通で十分と考える。
こんな生産システムや流通システム
でなされる国民国家経済は相当なダメージを受けると想像する。経済成長率の落ち込みはバブルの崩壊時のようでもあり、世界大戦が
まさに始まったかのような広さと深さを伴った経済システムのほころびがありとあらゆる場所で部門で始まる。
ただ注意深くこの現象を見てほしい。新型コロナウイルスの蔓延が収まった地域では急速な回復が始まるはずである。世界経済の不均衡の
問題との絡みがまだ私には判然としていない。回復に手間取るならば、不均衡をともども解消するに要しているということである。短期に
回復するのであるならば、不均衡は先送りされたと考えればよい。
いま必要なのはトレースするのみ。